◎作ろう!ニット帽。「ニットキャップカップ」
 

キャップカップトーク | Cap Cup TALK

◎Vol. 1: プロセスアートとしてのニットキャップカップ

●アンバランスなデザイン業界の構造を改革したい

[画像] 『ニットキャップカップ2007』第1回公開投票会場の入口 2007年9月1日・2日、表参道ネスパスにて行われた『ニットキャップカップ2007』第1回公開投票会場の入口。目印のための巨大なニットキャップが、来場者を出迎えた。「KCC」は、「Knit Cap Cup」の頭文字。

―― : 田中さんは、ニットキャップカップを、プロセスアートの観点からご覧になっておられるとか?

田中 : そうです。白倉さんから最初に企画の話を聞いたとき、単なるデザインコンペとは違う、と感じたんです。直接的な営利目的ではなくて、コミュニケーションの新しい形をデザインしようとしているのではないか、と思ったんです。そして、ニットキャップカップは、そのコミュニティデザイン活動そのものを提示する。つまり、白倉さんはプロセスアートをやろうとしているんだ、と。

白倉 : 僕は、田中さんと会うまで、プロセスアートという言葉自体、知りませんでした。ただ、現状の、「ファッション・アパレルデザイナー」と「テキスタイルデザイナー・ニッター(工場)」と「お客さん」という三者の関係性、その構造に問題があると思っていました。アンバランスな責任と対価の仕組みです。それを、関わる人の全員が幸せだと思える構造に変えていくことはできないだろうか、と。

【ニットキャップカップのプロセス図解】
[画像] ニットキャップカップのプロセス図解
すべてのオリジナルデザイン(応募作品)をオーダーメイドし、売り上げの半分をデザイナー(応募者)にキャッシュバックする。これが、ニットキャップカップが実現した、仕組み。

田中 : キャッシュバックが50%。そんなロイヤリティなんて、聞いたことありません。デザインの業界なら、10%だってスゴイことなのに。工場を持っている白倉ニットがデザインを直接受けると、こんな数字のロイヤリティが実現できる。普段どれだけ抜かれたり、積まれたりしているのかがわかって、価値観が変わってくる。それを、明らかにしているということが、気持ちいい。

白倉 : 業界に対しては、ある意味で、喧嘩を売っているのかもしれません。うまくやれば、もっと儲けられると思います。でも、お互いがお互いを尊重しあう、その関係が最もわかりやすく、お互いの距離を縮められる数字が50%。対等ですから。エントリーのとき、ご自身のニットキャップを制作する代金として4,000円をいただきます。でも、もしそれが売れた場合には、それはあなたのデザインがあればこそ。だから、半額の2,000円をロイヤリティとしてキャッシュバックします。それが、一番わかりやすい形だと思ったんです。

田中 : それが、すごい。とてもアーティスティックな発想だと思います。

白倉 : 僕はファクトリーワーカーでシステムばかり見ていますし、もともと理系の人間なので、アートはわからなくて。ただ、システムを作り上げて、それでみんなで楽しもうという想いはあります。

田中 : プロセスアートって、結果を想定しないんです。作っていって、その作っていく過程そのものが、アートになっていく。もちろん、そのプロセス自体が美しくなければならないんですよ。

白倉 : なるほど。ニットキャップカップは、美しいかなあ。

―― : 「関わる人全員が幸せだと思える構造」は、美しいのでは?

[画像] 表参道ネスパスの投票会場に、親子でご来場くださったお客様。 表参道ネスパスの投票会場に、親子でご来場くださったお客様。たくさんのニットキャップを次々とかぶっては笑い、とても楽しそうなお二人でした。また、写メール投票も、楽しんでいただけたようです。

白倉 : そうですね。実現できているのかな。でも、そういうものを目指しては、います。自分の作ったものを他の人が見て、それを買ってくれる。それは、とてもダイナミックでエキサイティングなこと。それを、ぜひ味わってもらいたい。自分の作ったものが売れて、ロイヤリティが手元に届く。それは、やはり資本主義の醍醐味だと思うんです。

(2007年9月19日 東京千代田区co-lab内にて)