◎作ろう!ニット帽。「ニットキャップカップ」
 

キャップカップトーク | Cap Cup TALK

◎Vol. 3: コミュニティの本質を探るニットキャップカップ

●ニットキャップカップが目指すコミュニティの形

[画像] 『ニットキャップカップ2007』第2回公開投票の様子 2007年9月29日・30日、新潟万代シティホール「リターナ」にて開催された、『ニットキャップカップ2007』第2回公開投票の様子。のべ数百人の方々にご来場いただきました。

―― : 白倉さんは、コミュニティというものにご興味をお持ちだとか?

白倉 : はい。コミュニティがどうやって生まれて、育って、壊れていくのか、ということに興味があるんです。ニットキャップカップの構造は、僕なりに考えたコミュニティ論を土台にして作ったものです。

田中 : それは、どんなものですか?

白倉 : 人と人がつながってコミュニティが生まれます。このコミュニティのコアとなる人物を、ハブと呼びます。そして、コミュニティとコミュニティが人でつながります。このコミュニティ同士をつなげる人物を、セグメントと呼びます。

【コミュニティの概念図】
[画像] コミュニティの概念図
ハブ(中心人物)のグランドデザイン(コミュニティのあり方を決める枠組み)によって、各個人がネットワークをつくる。それぞれのコミュニティは、セグメント(両方のコミュニティに参加している人)によって結ばれる。

田中 : ハブを中心にコミュニティが成立して、セグメントによってコミュニティ同士がつながるわけですね。

白倉 : はい。ハブが提唱するグランドデザインによって、人が集まって、コミュニティが生まれます。たとえば、起業する人が提唱した企業理念に賛同する人が集まって、会社が成立するようなものです。恋人同士や家族や友達同士だって、同じようなものかもしれません。それが崩壊するときというのは、グランドデザインが古くなったときだと思います。だから、時間の経過や時代に応じて、グランドデザインを変えていく必要がある。でも、それは一大事業で、リスクを伴います。変化のゆがみで、コミュニティが崩壊する危険だってある。だから、できればみんな変えたくないと思うんです。

田中 : 確かに、関係性を変えるには、大きなエネルギーが必要ですよね。

白倉 : 僕らのような国内製造業も、すでにグランドデザインとして古くなってきているんです。しかも、そのグランドデザインを変えていく余力すら残されていないかもしれない。そこで、このコミュニティを、別のもっと大きなコミュニティに取り込んじゃおう、と考えたんです。さまざまな価値観を持つコミュニティが複数存在する大きなコミュニティの中に入り込むことで、古くなったグランドデザインが独自の個性として認められるかもしれない。

―― : もう少し、具体的に言うと?

白倉 : たとえば、ファッションデザイン専門学校生は、同じ学校の友達がたくさんいるでしょう。けれど、プロダクトデザインの学校に通う友達は少ないかもしれない。ましてや、年代の違う、プロのデザイナーや建築家や小説家や、幼児や主婦というコミュニティの友達は、ほとんどいないでしょう。そういう、さまざまなコミュニティが集まった中に入ると、ファッションデザインができるということが、個性になる。同じように、幼児であることや、主婦であることも、他のコミュニティの人に対して個性として輝いてくるわけです。それまで何とも思ってこなかったことが、個性としてプラスに変わる。その瞬間は、とてもうれしいものです。それに、ここには、損をする人が、誰もいない。これが、グランドデザインを変更せずにコミュニティを延命することにつながると思うんです。これは、コミュニティとコミュニティがつながる場を作ることと、外側からコミュニティの中の個人を評価するシステムを同時に作ることを意味します。そして、これは、ニットキャップの仕組みそのものなんです。

[画像] 文化服装学院での「ニットキャップカップ2007 参加説明会」の様子 文化服装学院での「ニットキャップカップ2007 参加説明会」の様子。学生にとって、文化服装学院に属しているということは、個性のひとつである。ただし、その個性は、コミュニティ内においては、意味を持たない。しかし、その個性を活かすアイディアを表現できれば、外側から高い評価を得ることになるだろう。

田中 : 外側からコミュニティ内の個人を評価、ですか?

白倉 : スゴイ奴は、外から見ないとわからない。そんな風に、昔から思っています。外から見て、お前はスゴイよ、と言ってくれる人がいるかいないかで、その人が化けるかどうかが左右される。そう思います。コミュニティの中では、似た価値観なので、没個性化しちゃうと思うんです。ですので、できるだけ、その人を外から見てあげてください。見たら違うんじゃない。そんな風に思っています。

【コミュニティの相互作用】
[画像] コミュニティの相互作用
コミュニティの中にいる個人を、別のコミュニティの中にいる個人に評価してもらうというアイディア。従来のコミュニティに属したまま、客観的で明快な外部評価を得ることができる。また、属するコミュニティの個性も発揮される。

―― : デザインをする人たちのさまざまなコミュニティの中に、白倉ニットというコミュニティが入ることで、国内製造業というコミュニティが古かったとしても、物を作るという個性となって蘇るわけですね。

田中 : これからの国内製造業は、きちんとしたブレーンがついて、クリエイティビティが高くなければダメ。国外へのアウトソースとは、まったく違うものを目指すべきなんです。コストじゃ負けちゃうわけだから。だからこそ、作り手として、自分たちを開いていかなければならない。そのためにも、白倉さんも他のコミュニティと積極的につながるべきだし、さらに工場側のオピニオンリーダーになっていくべきだと思います。デザイナー側は、メディアへのチャンネルもたくさん持っていて、どんどん発表しているじゃないですか。それと同じような華やかな活動をする必要はありませんが、新しいシステムや仕組みを、きちんとPRする姿勢を持つことが大切だと思います。

白倉 : そうですね。僕らは、理解されなくちゃいけない。自己満足じゃ意味がないから。参加してくれた人たちに、感じてもらうことが一番だと思っています。僕らは、物を作っています。だから、やっぱり、物を通してコミュニケーションしたい、という想いがあります。デザインを送ってくれた人がいて、その人の手にニットキャップが届く。「ああ、こんな風になったんだ」と思う。公開投票へ足を運んでくれた人が、他の人のデザインを見て、「こんなのがあるんだ!」と発見する。「もっと、こんな風にすればいいかも」と考える。そういったことが、僕の考えていること、そのままなんです。難しいこと抜きに、ニットキャップカップを楽しんでもらって、そこで感じてもらうこと。理屈だけじゃなくて、体験として、こうしたコンセプトを味わってもらいたいと思っています。

[画像] すべての応募作品を2つの輪がリンクする形に並べたデザインが、ニットキャップカップの目指すものを表している
すべての応募作品を2つの輪がリンクする形に並べたデザインが、ニットキャップカップの目指すものを表している。

―― : いよいよ投票で選ばれた50デザインの販売が始まります。どんなデザインが選ばれ、どのような売れ方をしていくのか。それもまた、参加した人にとって、体験のひとつとなるでしょう。とても楽しみです。また、早くも、来年の第2回目の開催も楽しみになってきました。本日は、どうもありがとうございました。

(2007年9月19日 東京千代田区co-lab内にて)